昔、「ガロ」という人気の漫画雑誌に連載しておられた漫画家さんです。世代が少し上なので気にはなっていましたが、こんなに面白いとは思いませんでした。「ボロ宿考」には
貧しげな宿屋を見ると私はむやみに泊まりたくなる。そして侘しい部屋でセンベイ蒲団に細々とくるまっていると、自分がいかにも零落して、世の中から見捨てられたような心持になり、何とも言えぬ安らぎを覚える。世の中の関係からはずれるということは、一時的であれ旅そのものがそうであり、ささやかな解放感を味わうことができるが、関係からはずれるということは、関係からの存在である自分からの解放を意味する。私は物事を論理的に思考することが苦手な方で、また学問もないし、勘に頼っているので誤ったことを云ってるのかもしれないが、自分のボロ宿好みをこんなふうに考えてみたのだった。
いや、充分に論理的でわかりやすい文章でした。自分の感情にまっすぐで肩ひじ張らず素直に結構大胆な実話(?)がふんだんに盛り込まれていて、堪能しました。巻頭の「蒸発旅日記」には仰天しました。
獣医師日誌 2021年11月8日