実は千里の国立民族学博物館が大好きです。その元館長、梅棹忠夫といえば本多勝一と並んで、僕らの時代のスターで著書を読み漁っていました。自伝の中に面白い記述がありました。先生の博士論文で、羊の群れの隊列を数式で表すという研究です。実際には羊を何頭も群れで飼って観察できないのでオタマジャクシで代用したというのです。オタマジャクシを池からすくってきて水槽で飼育し上にやぐらを組んでその動きをコマ送りの写真に記録、顕微鏡で観察したそうです。さすが京大理学部。動きの分析は確率論でその分布は二項定理に従うと考えるそうで、ポリヤエッゲンベルガーの式というのがあり社会性の指標となるそうです。”群れの計算式“という発想が凄いのですが、はたして哺乳類の羊を両生類のカエルで代用できるのでしょうか?自伝なので確かに自慢たらしい記述が多いようにも思いましたが、理系らしく冷徹に自分を評価している箇所も多数あります。恵まれなかった大阪市大時代を顧みて『自分は教育者にはまるで向いていない。』という記述もありました。民博の展示では憂歌団の木村さんのギターや小林旭のレコードも飾ってあったりして展示の基準がよくわからない面もあります。カオス(混沌)という言葉がぴったりです。建物のジオラマや実物大の模型もあり妄想するには最適の場でした。
『全ての探検と学究の糸口は妄想から始まるのである。』いやー名言ですね。妄想は実は大変よいことなんですね。
谷 憲一郎(院 長) 2018年5月8日